2005-03-01から1ヶ月間の記事一覧

酔画仙

イム・グォンテク『酔画仙』(2002、韓国)を観る。 水墨画のような風景が見える。中国の桂林や黄山などではなく、朝鮮半島の風景であり、それは、河のほとりであったり、畑の広がる平野であり、また湖である。それらの風景が、背景として『酔画仙』の主人公…

ロング・エンゲージメント

遅ればせながら、やっとジャン=ピエール・ジュネ『ロング・エンゲージメント』(A very long engagement、2004、仏・米)を観る。 フランス映画伝統の良質なエンターテインメントの恋愛映画であると同時に、反戦映画として素晴らしいフィルムだった。 ジャ…

ナラタージュ

島本理生『ナラタージュ』(角川書店)は、いまどきの小説にしては、あまりにも古典的なスタイルで書かれ、硬質な文体と関係の絶対性の心理分析など、作者の年齢にしては成熟した見事なできばえになっている。恋愛と人間関係の本質に迫る作品だ。 ナラタージ…

白夜

ルキノ・ヴィスコンティ『白夜』(1957)は、大作『夏の嵐』(1954)と『若者のすべて』(1960)の間の小品と見られがちだが、今回、ニュープリント修復版を観て、この作品の素晴らしさを見直した。 マルチェロ・マストロヤンニとマリア・シェルの二人のシー…

熊座の淡き星影

いまさらというべきか、やっとヴィスコンティの長編14本のなかで、唯一未見であった『熊座の淡き星影』(1965)を観ることができた。 『山猫』(1963)では、華やかな笑顔を振りまいていた蠱惑的な美女クラウディア・カルディナーレは、『熊座の淡き星影』で…

正しい保健体育

朝日新聞3月20日(日)の「ベストセラー快読」で、みうらじゅん『正しい保健体育』(よりみちパン!セ、理論社)がとりあげられていた。通常、この紹介文とも書評ともいえる「ベストセラー快読」を読むことで、売れ筋本が分かるわけだが、それ以上、購入…

けったいな連れ合い

車谷長吉の奥様は、詩人の高橋順子さん。 この二人の結婚に至る経緯が読ませる。 けったいな連れ合い作者: 高橋順子出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2001/05メディア: 単行本 クリック: 14回この商品を含むブログ (6件) を見る 1993(平成五)年に、…

飆風(ひょうふう)

『飆風』(講談社)は、車谷長吉最後の「私小説」らしい。 飆風作者: 車谷長吉出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/02/08メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (12件) を見る 『桃の実一ヶ』『密告(たれこみ)』『飆風』の私小説三篇と、講…

ウェブログの心理学

タイムリーな著書『ウェブログの心理学』(NTT出版)が刊行された。 早速、一読。著者は、山下清美/川浦康至/川上善郎/三浦麻子・四人の共著。 ウェブログの心理学作者: 山下清美,川上善郎,川浦康至,三浦麻子出版社/メーカー: NTT出版発売日: 2005/03/01…

山猫

ヴィスコンティの最高傑作の一本『山猫』(1963、イタリア語完全復元版)を観る。 着飾った紳士、淑女たちが公爵邸に集い、延々と繰り広げられる舞踏会は、『山猫』のおよそ三分の一にも及ぶ。シチリア島の伝統ある貴族・カリーナ公爵(バート・ランカスター…

パピエ・マシン

ジャック・デリダ『パピエ・マシン(上) 物質と記憶』(ちくま学芸文庫)の『来るべき書物』『ワードプロセッサー』『紙かそれとも私か。ご存知のように・・・』は、紙と書物にまつわるデリダの考えが語られていて、私にとって興味深い内容だった。媒体とし…

レフトアローン(LEFT ALONE)

井上紀州の『LEFT ALONE 2』を観る。この日は、最終上映日でスガ秀実と監督・井上紀州の簡単な舞台挨拶があった。『LEFT ALONE 1』は未見なので、この映画だけで、『LEFT ALONE』全体を論じることはできないが、松田政男、柄谷…

トニー滝谷

村上春樹原作、市川準脚本・監督『トニー滝谷』を観る。 映画を観たあと、原作を再読するとほとんど原作に忠実に製作されていることがわかった。村上春樹の作品そのものから受ける印象とは、リアリティに欠けることであるが、テクストとして読む分にはさほど…

ラ・トゥール

芸術新潮 2005年 03月号出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/02/25メディア: 雑誌 クリック: 8回この商品を含むブログ (2件) を見る表紙は「ゆれる炎のあるマグダラのマリア」 『芸術新潮』2005年3月号で「ラ・トゥール」の特集が組まれている。 また …

祝!芸術選奨・文部科学大臣新人賞・受賞(3月9日補記)

絲山秋子さんの『海の仙人』が、芸術選奨・文部科学大臣新人賞・受賞です。 おめでとうございます。絲山さんが、国家による「新人賞」(文学部門)など受賞していいのだろうかと思ってしまいますが、「賞」は貰えるときに貰うものです。 海の仙人作者: 絲山…

逃亡くそたわけ

逃亡くそたわけ作者: 絲山秋子出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2005/02/26メディア: 単行本 クリック: 30回この商品を含むブログ (200件) を見る 絲山秋子『逃亡くそたわけ』(中央公論新社)は、絲山氏の4冊目の単行本にして、はじめての書き下ろし…